【ブログ版】世界の名作文学を5分で語る|名作の紹介と批評と創作

YouTubeチャンネル『世界の名作文学を5分で語る』のブログ版です。世界と日本の名作紹介と様々な文学批評 そして自作の詩と小説の発表の場です

自作の詩

若き日はや夢とすぎ・・・・・・

創作 詩と小説 エセーと随筆 元々ぼくには大事な友達がいた 彼らと過ごした日々は 濃い原液のようなものであり あの頃ぼくらは同じ空間や ある種の心のムードを 共有していた 北海道で彼女が流氷に言葉を失う 信州で彼が青空に郷愁を感じる そして東京にいた…

自作の詩「薄明の歌」by Amabe

創作 詩と小説 エセーと随筆 薄明の歌 小鳥が薄明に歌う 夜明けから飛び出し 曙光と呼ばれ 空の一風景に堕すまでは 現れたことそのものが畏怖をもたらし 静謐の中で 森や山や海と 空との境目あたりで燃え上がる炎は 人々を平伏させ 眼差しの奥底にまで差し込…

日本武尊の恋歌 NAOTO AMABE

創作 詩と小説 エセーと随筆 古い館に入る そこで外の仲間が 消えるのを目にする あれは 道 なのか 運んでいるのは 声や視界や願い 彼らの明日が広がる 彼らをかわす時の流れ 彼らの原点が彼らの滅びへ至る道の始まり 自然消滅への流れは 真昼間時 古い館の…

自作の詩「足もとの花々」by辻冬馬

創作 詩と小説 エセーと随筆 足もとの花々 土手を裸足で歩く頃 脇に咲く黄色い花々が 新しい季節が吹きかける風に揺れ 束の間の夢を生き抜く力について 素知らぬ顔を崩しもせずに 語り続け やがて その囁きが 大気を震わせる壮大な音楽に昇華する 土手から見…

自作の詩「ある移動」習作時代

創作 詩 小説 文学随筆 ある移動 展望台にいた頃は ぼくには1年後や そのあとの季節はなかった 漠然とした鬱陶しさだけがあり それも夕暮れ時の涼しい風に飛ばされた ぼくは大事なものを 目の届くところに置き 同胞意識でつながれて 言うことはなかった 雨…

自作の詩「ぼくが待っているもの」by辻冬馬

詩 ぼくはいつも待っている 母さんが晩御飯で 大好きなシチューを作ってくれるのを 兄さんがいつのまにか飽きてしまった ゲームソフトをぼくにくれるのを ぼくは毎日学校で 授業が終わるのを待っている 放課後になるのを待っている ぼくはいつも待っている …

自作の詩 始原の足跡  by辻冬馬

詩 始原の足跡 それは道だったのだろうか 百万年前の アフリカの大地に残る親子三(人)の足跡 それは生活というものの痕跡だったのか 誕生間もない新種の サル科類人目ヒト種の(決してヒト科ではない) 餌探しの途中の偶然の一歩だったのか それともそれは…

自作の詩「風の終点のその向こう側」by辻冬馬

文学創作 小説 詩 ポエム エセーのためのカフェ 風の終点のその向こう側 蝶々が風と別れて 海を前に羽を休める そこでまどろみから覚めて 海に去る者たちへ 別れの言葉をかけていた 数え切れないほどの何かが 海に散った 何もかもが 当たり前のように消えて…

自作の詩 風の終点  by 辻冬馬

文学創作 小説 詩 ポエム エセーのためのカフェ 風の終点 蝶々が風の化身のように 陽光の中を ふわふわと流れ 大気の海の底で夢を見る 消えて行く風の囁き・・・ 蝋燭の火を吹き消すほどもないけれど 確かに作られた羽の動き すると次には周囲から坂を下るよ…

自作の詩 酒と酒の狭間で  by 海部奈尾人

文学創作 小説 詩 ポエム エセーのためのカフェ その男は未来に向かって突進できず 夜の奥地で飲んだくれていた 酒の中にずんずん分け入っていけば その深みは日々の様々な困難から わずかの隙間でしばしの間守ってくれる だが輸血しているようなもので それ…

自作の詩 星を巡る言葉   by  海部奈尾人

文学創作 小説 詩 ポエム エセーのためのカフェ 詩 一つの言葉が金星に乗った あの頃、旅の夜にあとさきかまわずしゃべっていた。 別の言葉が木星にぶつかり その人が期待通りのあいづちを打つ。深く心をくすぐる浮ついたセリフが煙のように部屋の中に漂う。…

自作の詩 シクラメンの香りの向こうに  by  辻冬馬

文学創作 小説 詩 ポエム エセーのためのカフェ その頃好きだった女の子に もう二度と会えなくなったので 空一杯にその子の顔が広がって シクラメンの香りを聞きながら ゲーテやハイネの幾つかの 抒情詩を読んでため息をついては その失われた世界にこそぼく…

自作の詩 彼女の道

文学創作 小説 詩 ポエム エセーのためのカフェ いつの日か子供たちは思い出すだろう 夏休みに家族で海へ行き 白い雲がもくもくと水平線に湧きがるのを見たことを お母さんとおじいさんとおばあさんがいて お父さんはいなかった お父さんはその年の春に事故…

自作の詩 沈みゆく船と共に死にゆく人々の夢    by 辻冬馬

文学創作 小説 詩 ポエム エセーのためのカフェ その船は一気に沈没した 甲板にいたぼくは 船と一緒に海中へ引き込まれた 船が沈めばもう助かる見込みはなく こうやって甲板に座ったまま 溺れ死ぬのだなと思っていたが 息に余裕があり体力にも余裕があり こ…

自作の詩作 記念写真

文学創作 小説 詩 ポエム エセーのためのカフェ 記念写真 父母の家に昔の写真が飾られるようになった 目の前の老人が自分の配偶者であるのも何だから 互いの若い姿を見るためなのだと言う 一枚だけさらに時を越えて 今は亡き祖母と手を繋ぐ小学校一年生の母…

自作の詩 最後の風  by 海部奈尾人

文学創作 小説 詩 ポエム エセーのためのカフェ これが最後の風であると・・・・・・ 通り過ぎて来た数多のわたしが その午後 重なり始め やがて 一つに収束する そのとき これが最後の風であると ありとあらゆるわたしが はっきりと知る 誰一人反駁すること…

自作の詩 赤い灯台の歌 by 辻冬馬

文学創作 小説 詩 ポエム エセーのためのカフェ 赤い灯台の歌 あの 夕立のあとの 雨露に輝く草や葉や 若い瞳のきらめきが まっすぐな道のように 今のぼくまでのびていて ぼくはあの日の涼しい空気に いつでも自由に帰ることができる 混沌 爆発する時代 力の…

自作の詩「彼女の夢の途中」  by 辻冬馬

文学創作 小説 詩 ポエム エセーのためのカフェ 「彼女の夢の途中」 即興詩 その夜はそんなふうに過ぎていった 出張から戻った彼女は家に帰らず あのバーでワインを飲んでいた もし彼が ドアを開けずに店が閉まれば 彼女はもうひとつの旅に出る もし彼が隣に…

自作の詩 結婚する友の肖像   詩

文学創作 小説 詩 ポエム エセーのためのカフェ 結婚する友の肖像 古荘英雄 一九九九年四月十日 もしかしたら幼い君は 積もった雪の下の 春に備える草木の営みや 成長に専念する虫たちの忍耐を 心に焼け付けはしなかっただろうか あの頃ほっつき歩いた学生街…

自作の詩 群れ    詩作  by辻冬馬

文学創作 小説 詩 ポエム エセーのためのカフェ 群れ 中に立ち入れば 禍事も慶事も群れの中に隠れている 人々は互いに感じ合って ざわめきが収まる気配はない 反応の連鎖に疲れ 感覚に自他の区別が消え いつの間にか中心が空洞となり 群れが出来上がる 表情…

自作の詩の創作  雨垂れ  by 辻冬馬

文学創作 小説 詩 ポエム エセーのためのカフェ 雨垂れ ふと 早朝の五時 窓越しに 庭を濡らす雨があった たたずむ人の 幻を編み上げながら 湿気が寝息のように微かに揺れて 穏やかさが 雨音の中で次々に生まれる とはいえ それは 幾多の 災厄の場にも しめや…

自作の詩  約束の木々に吹く風

文学創作 小説 詩 ポエム エセーのためのカフェ 合作(古荘 海部 辻) 写真:じゅん松本さん 代表 辻冬馬 約束の木々に吹く風 あれはまだぼくが 父さんと母さんと暮らしていたころのことだ そして あの霊に満ち満ちた愛犬が ぼくの前を長いリードをぴんとは…

自作の詩  にらめっこ

文学創作 小説 詩 ポエム エセーのためのカフェ 二つの針の微妙な配置が 時計盤に表情を作り出し 申し分のない話相手が出現する それは晴れ舞台や何かの幕引に いつも一緒だった もちろんただの日常の波間にも その存在が意識を離れたことはない ぼくが死ん…

自作の詩 夕日の中の一頭の馬  by Naoto Amabe

文学創作 小説 詩 ポエム エセーのためのカフェ 夕日の中の一頭の馬 by Naoto Amabe あの赤い大気の風景の中で あの一頭の馬は 何を乗せて走り去ったのだろうか沈む太陽を追いかけてぼくの視界から消えてしまったあの馬は夜に飲み込まれてしまったのかそれと…

自作の詩 夜行列車     by Naoto Amabe

文学創作 小説 詩 ポエム エセーのためのカフェ 夜行列車 by Naoto Amabe 過行く風には未来の香りが漂う 明日の朝日は今日を消し去る ああ 今彼女と逃げた夜行列車の響きが聞こえる それは青春の終焉だった 夜行列車を下りたとき 少しだけ首をかしげて 彼女…

自作の詩 「夢と夢」 by 海部奈尾人

文学創作 小説 詩 ポエム エセーのためのカフェ 「夢と夢」 by 海部奈尾人 *写真はLEEさんの友情出演です 彼女の夢は 雨上がりの 朝の陽差しに照らされ て 緑の草の葉の上を流れる雫の煌めきのよう 僕の夢は もう目覚めることのない 最後の眠りに現れると…

自作の詩 渡り鳥の天空の道  by辻冬馬

文学創作 小説 詩 ポエム エセーのためのカフェ 渡り鳥の天空の道 渡り鳥の進路が あの空にあのように 伸びていき 入日と共に水平線に尽きていく 人の世の営みの はるかな高みにそれは定められ 地上の生命の呼吸の叶わぬ高みを いわば死に満ちた空間を 渡り…

自作の詩 エミール・ゾラの夢  by辻冬馬

文学創作 小説 詩 ポエム エセーのためのカフェ エミール・ゾラの夢 前 口 上 [ドレフュス事件] ある日フランス情報部のくずかごから何者かが砲兵部隊の機密をドイツに売り込む旨を記した文書が発見された。情報のリストが書かれたその文書は<明細書>と…

自作の詩 山陰の海  by辻冬馬

文学創作 小説 詩 ポエム エセーのためのカフェ 山陰の海 ぼくの前に 日本海 無縁の海 忘れられた青 この青はあらゆる太平洋と違う 海を見るとき 人を見て 歴史を見て 物語まで見て いることを ぼくは知らなかった この青は 向こう側に夢を持たない 自然であ…

自作の詩 猫の村

文学創作 小説 詩 ポエム エセーのためのカフェ 猫の村 ぼくと共に ここまで育ってきたものたち ぼくらは雑草の中の ほったて小屋で生まれた よく晴れた日に 早朝の満ち潮に運ばれて この世にたどり着いた 猫が見守っていたらしいのだ 起き抜けに背中を伸ば…