自作の小説
かつて参加していた文芸誌らんぷに掲載した小説です ドイツの詩人作家であるハンス・カロッサをモデルにしています カロッサは第一次大戦に軍医として従軍してルーマニア日記も書きましたが そのカロッサが終戦直後にフランスの戦線からドイツに還る様子を小…
境界の村で 古荘英雄 灰色の海面が大きくゆっくりとうねっている。うねりとうねりがぶつかる所では白い波頭が生まれ、沖合いのあちこちに数多く踊っている。うねりはそのリズムの中で、定期的に岸の方にも来る。それはそのまま岩場にせき止められ、あるいは…
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第2章 美津江は祖母の死の知らせを聞いて以来、慌しさの中にいた。 その時、美津江はPTAの集まりで中学校にいた。何度もバイブレーションを繰り返す携帯に、不審を覚えて着信を見ると、見覚えがない。しかし、家族のような図々しさで、取るまではかけ続…
船にのる少女 第一章 祖母の葬儀が終わった翌朝、美津江は中学生になる娘の美香から、この洋間のない古い家でお膳を囲んで食事をするのが、結構暖かくて好きだと言われた時、確かに昔この家の食卓に自分も同じことを感じていたのだと、かすかに頷いた。 * …
この海は三年間いつも意識の脇にあった。夕日を浴びて、真っ赤になった海と空が、柏木の胸に迫った。 麻美の家に自分の知らない女がいて、自分は特別な使者として会うのだと思うと、何だか得意げな気持ちになった。 さきほどの、主任からの思いがけないキス…
小説と詩の創作と文学エセー 今日は三年間で溜まった、イレギュラーな未処理案件を、整理に来たのだった。それは、表には出せないが、社内的にも正規の処理が出来ないという類のものだった。休日に一日取る必要があった。転勤の際には必ず必要な作業だった。…
あの兄弟は、山が好きで二人で夏山、冬山問わず登っていた、西野はまた思い出す。長くて二泊三日で帰って来るような軽いものが多かった。学生のころは兄の方は、本格的にあちこち登ったらしいが、卒業してからは、素人の弟を連れて、気晴らし程度の散歩代わ…
小説と詩の創作と文学エセー 柏木と麻美が《校舎》に入った時、カウンターには信一がいて、何やら西野と深刻そうに話していた。 柏木は近寄りがたい雰囲気を感じて、いつものカウンターの席には着かなかった。代わりに、プラトン全集の並ぶソファーセットに…
小説と詩の創作と文学エセー ママはその夜、ラメールを開けるのはやめた。少し風邪気味で、結局開店時間になっても直らなかった。熱っぽかったし、咳も出た。しかし、ことのほか波音が聞こえる夜だったから、しばらくそれを味わってから帰ることにした。 波…
小説と詩の創作と文学エセー 本棚が空っぽになったら次は衣装棚の中、再び今度は服をダンボールに詰めて行く。こちらはもう詰めていくだけなので早かった。今、来ている五着のサマースーツと十枚の夏物のシャツ、それと靴下を別にして、さらに夏の私服と下着…
小説と詩の創作と文学エセー 翌朝、麻美が来るまでに家主への挨拶を済ませようと、柏木は部屋を出た。 家主の住む母屋までの二百メートルほどを、のんびりと歩いた。 スーツ姿でネクタイも締めて、ズボンのポケットに手を入れて、柏木はその道をゆっくり進ん…
小説と詩の創作と文学エセー 信一は水割りを飲み、煙草を吸っている。ママに水割りを作らせない。キープしたボトルに加えて、氷と水を前に置かせて自分で作るのだった。信一はまずストレートで少し飲む。それから氷を入れる。そして、氷が大分溶けた所で追加…
小説と詩の創作と文学エセー やがて、大きな信号音がピーっと鳴る。それに続いて、印字の音さえ大きく感じながら、打ち出されつつある文字を凝視する。 人事異動発令 これで皆一気に静かになる。柏木の緊張もピークに達する。話し声はなくなり、次の文字を見…
文学創作 小説 詩 メルヘン 童話 ポエム エセーのためのカフェ 現代版「絵のない絵本」アンデルセンもどきに 冬山に逃げた王様の物語⑤ 百人の武器を持った家来が谷底に奪った武器を放り投げていたときのことです。 そのうちの5人がこっそり武器をもったまま…
小説と詩の創作と文学エセー やっぱり変人で、嫌な仕事だと柏木は思った。今日もはぐらされたばかりか、嫌だと言うのを、無理矢理にでも払ってやろうというのに、皮肉まで言われた。この老人の保険契約は、ずっと昔にやめた職員が前妻の方と話しをつけて決め…
文学創作 小説 詩 メルヘン 童話 ポエム エセーのためのカフェ 現代版「絵のない絵本」アンデルセンもどきに 冬山に逃げた王様の物語④ 百人の武器を持つ男たちは、王国の栗の大木を次々に切り倒していくのに夢中で、持っていた武器をみな、王様に奪われまし…
小説と詩の創作と文学エセー 信一が、交通事故で足と腕の骨を折った老人の手伝いで、漁に出るようになってから半年が過ぎた。 朝、五時に起きて六時前には船を出した。皮膚に七十年分の潮が染み込んだ老人は松葉杖で必ず先に来ていた。 大通りから階段で五段…
自作の童話「雲の妖精の物語」 現代版「絵のない絵本」アンデルセンもどきに 文学創作 小説 詩 メルヘン 童話 ポエム エセーのためのカフェ第二話 冬山に逃げた王様の物語④ 百人の武器を持った男たちは、王国の大事な大きな栗の森に入ると、自分たちが食べる…
店はかつての学校の跡地にあった。一つの教室を丸ごと残し、教壇の上にはピアノが置かれ、廊下の部分が厨房であり、廊下との間の窓がカウンターだった。壁にはそこここに絵や写真が、それぞれにふさわしい額縁に収められて掛けられてあった。カウンター以外…
小説と詩の創作と文学エセー 車で坂道を下って行く。山肌にぐるぐるとカーブする道が巻き付いていた。そこを、軽快にハンドルをさばきながら、さしてスピードをゆるめることもなく車を進める。 通勤前のスポーツのようなものだった。普段からがらがらの道で…
小説と詩の創作 随筆 車のシートに身を沈めて、リモコンのボタンを押す。暗かった車庫の中に、滲むように、徐々に光りが入ってくる。キーを回すと、狭い空間にエンジン音が響く。シャッターが開くまでの間に、目が明るさに慣れて来る。やがて、完全に視界が…
小説と詩の創作 文学随筆エセー その日の夜、陽一は洋子から電話をもらった。裕也を野球に連れて行って欲しいという依頼だった。そして二日後に、裕也自身からのお礼状と野球を楽しみしているという旨のハガキを受け取ったのだった。 明日が裕也と野球観戦と…
小説と詩の創作 文学随筆エセー 日曜日、昨夜からの不快感でたまった憂さを晴らしに、ドライブに出た。車のドアが重々しく閉まる感じが心を平静にさせる。そして、気分としてはヘリコプターを操縦するように、アクセルを踏み、ハンドルを切る。 この間、裕也…
第7話 米沢にはメールでプレゼントを届けたことだけを報告した。自分だけの思い出にしたかったのかもしれない。せめてこの土日だけは誰にも話さず余韻を噛み締めていたかったのかもしれない。陽一にとってはそういう出来事だった。 その土曜日の夜、バーボ…
第6話 変な人だなやっぱり、と煙草に火をつけ、煙を吐き出しながら陽一は物思いに耽った。たとえ公のことでもちょっと例外を作って、自分で持っていけばいいものを。 甲斐の営業所と同じような光景があった。がらんとした空間を煌々と照らす蛍光灯。無機質…
第5話 米沢はY高原の偶然にかこつけて電話することは、少しもおかしなことではないと思った。 Y高原のホテルで会って、個人的に言葉もろくにかけずに香山の後ろに突っ立てたことに対する謝罪と、偶然会ったことに対する感慨の言葉を今更ながらにかけるつも…