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現代版「絵のない絵本」アンデルセンもどきに
冬山に逃げた王様の物語⑤
百人の武器を持った家来が谷底に奪った武器を放り投げていたときのことです。
そのうちの5人がこっそり武器をもったまま立ち去るのを、私、雲の妖精は見ていました。
歩き方がこそこそして、あきらかにいけないことをしていることがわかりました。
私はずっと不思議に思っています。
人間という生き物は、なぜいけないと思っていることをしてしまうのでしょうか。あんなにこそこそと、まるで隠れるように、あたかも逃げるように歩くなら、はじめからいけないことをしなければいいのにと思いますけど、それが人の心に神様が与えた修行の印なのだと今ではわかりました。それはある日太陽がこっそりと教えてくれたのです。
5人の武器を持った家来は、そのまま王様の宮殿に行きました。この王国では兵士はいませんし武器もありません。みんな笑顔と知恵でものごとを解決するのです。
そんな王国の王様の宮殿に、武器を持った五人の男が乗り込んだのでした。
五人はずかずかと王宮に入っていきました。みんはびっくりして飛び跳ねるように起きてきました。そして王様の部屋がある長い廊下に差し掛かった時には、大勢の家来たちが5人の前に立ちはだかっていました。
やがて王様も騒ぎを聞きつけて出てきました。
「どうしたのだ?」
王様はみんなに聞きました。
みんなは五人を指さしました。
「お前たちは3年前の旅の5人兄弟ではないか?どうしたのだ」
この5人は3年前の雪の振る日に、王国の入り口あたりで寒さに凍えてもう歩けなくなっているところを、道行く人に救われて、やがて王様に謁見し、王国で暮らすことを許された経歴をもっていました。王国では何不自由なく暮らしていましたが、旅から旅の生活が慣れていたからでしょうか、なんとなく5人はつまらなく思って来ていたのでした。