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私は雲の妖精です。
世界中の雲の中にときどき目覚めてはあれこれ語るのが私の生き方。
昨日は月と一晩中話をするうち、切れ切れに私は消えてしまったのですけど・・・・
今夜は眠れずに窓から星を眺める子供たちに、思い出話をおしゃべりしたいと思います。
冬山に逃げた王様の物語②
しばらく晴れの日が続いて、私が眠れるほど大きな雲が町を通ることがありませんでしたから、とても久しぶりにお話することになりました。
冬山に昇る王様の話の続きです。
吹雪の合間に食事をとった王様は、追っての二人組からできるだけ遠くへ行こうと、山頂に向かって歩き続けました。あれは今から6000年ほど前のこと、今では冬の山にスポーツで昇る人たちもいますが、あの頃はそんなことをする人はいません。冬の山に自分から昇って行った最初の人がこの王様でした。
吹雪は容赦なく王様を責めました。わたしはちょっとだけ角度を変えたり、強さを変えたりしてあげました。その分追手の二人には激しく正面から風があたるように風の妖精に頼んだのでした。
王様はドナウ川という大きな川の流域に住んでいました。そこで人間たちは魚をとったり小麦を栽培したり、小さな森の生き物をとったり栗の林で採集したりして、楽しく平和に暮らしていました。
当時の人間はほとんどの人は毎日のように楽しく平和に暮らしていました。私はそんな人間たち見るのが好きでした。
ある日王様の村に100人の男たちがやってきました。みんな弓矢や槍をもって、それは石の矢じりだったのですが、どうみても強そうな集団でした。
食べ物が欲しいというのですが、100人分の食べ物というと大変です。それでも王様は
「森の栗の実をとってもいいですよ。魚も少しなら、森の動物も少しならとってもいいですよ」と言ってあげたのでした。
100人の男たちのボスが言いました。
「それをあんたたちが取ってきてくれ、おれたちのために」
王様は堂々と言いました。
「私たちが神様から預かった土地の食べ物を分けてあげると言ってるのだから、自分たちで取ってきてください。人はみな自分のことは自分でするものですよ」
100人の集団はそれ以上言い返さず100人で森の中に入っていきました
続く