【ブログ版】世界の名作文学を5分で語る|名作の紹介と批評と創作

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自作の童話 「 雲の妖精の物語 第5話」 by 海部奈尾人

 

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現代版「絵のない絵本」アンデルセンもどきに

 

冬山に逃げた王様の物語④

 

百人の武器を持つ男たちは、王国の栗の大木を次々に切り倒していくのに夢中で、持っていた武器をみな、王様に奪われました。

 

 

 

そして王様に武器を返せと文句を言ってきたのですが、百人の武器をもたない男たちは、百人の武器をもつ家来に取り囲まれて、文句も言えなくなってしまいました。

 

 

 

「きみたちは王国の大事な栗の木を伐りたおした。だから大事な武器をもらった」

 

王様はにこやかに言いました。

 

「きみたちはこのままこの国から出ていくといい」

 

百人の武器をもたない男たちは、やむなくそのまま国を出ていきました。

 

 

 

王国の人たちはほっとして

 

「王様万歳」と何度も繰り返しました。

 

 

 

実はこの栗林とこの大きな湖と、すぐそばにあるきれいな海と大きな川のおかげで、王国はとても豊かでした。だからいろんな人が王国にやってきては、無理難題をいってきたりもしていました。

 

そのたびに王様は血を流すことなく、見事な智慧で解決していました。だからみんなは王様が大好きでした。

 

 

 

私、雲の妖精もそんな王様を見るのが大好きでした。

 

 

 

 

ところでその夜のことでした。

 

武器をもった百人の家来たちは、王様の言いつけ通りに武器を谷底に捨てに行きました。怖い武器は見たくもないというのが王様の考えでしたから、家来たちも当然そう思っていたのです。

 

みんなはおもしろがって槍や剣や弓矢を谷底に捨てていきました。王国の谷にはドラゴンが住むともいわれていたのですが、とにかく深い深い谷でしたから、捨てたら二度と武器は人目につかないはずでした。

 

 

 

でもどんな素敵な国にも、よこしまな心は生まれるという悲しい事実を、私はその夜、月の光の中で見ることになりました。

 

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