【ブログ版】世界の名作文学を5分で語る|名作の紹介と批評と創作

YouTubeチャンネル『世界の名作文学を5分で語る』のブログ版です。世界と日本の名作紹介と様々な文学批評 そして自作の詩と小説の発表の場です

2019-01-01から1年間の記事一覧

女神が歌う舞台の片隅で

散文詩 【女神が歌う舞台の片隅で】第2稿 12/01/0:46 眠りに入るために灯りを消して、眠りが来るまでの微かな時間、ぼくは夢に先駆けてやって来る「イメージ」を夜ごと目にする。ヒーロー願望や歴史のIFなど無意識の渇望を満たす他愛ないイメージを楽しむ…

【かなり面白い長編小説の書き出し】量販店「伊豆沖ランド」の倒産記者会見|序章から第二章途中まで

序 嵐の店内放送「明日は台風19号の影響により、お客様の安全確保を考慮し、臨時休業とさせていただきます」 首を洗う気分で立ち寄った本社から最寄りの営業店の店内に、この放送が流れたとき、山岸はほっと胸をなでおろした。 3時間まえのことだ。大型台風…

文学的創造における自我と普遍的自己 NA

文学的創造における自我と普遍的自己~Oさんのつぶやきから~ ①「君の別れの言葉が頭の中でいつまでも舞い落ちる でもやがて青空を背景に凛として裸の樹木が立ち尽くす時が来る そのときは生きる意味が枯葉に覆われても 新たな意味を天に問いかける矢として…

秋を見つけた日に  NA

秋を見つけた日に ✳️ それは山の中にいた すすきが細やかな影を作る道を 揺らめく夢となって風が吹き抜ける時それは街の中にいたビルの上を通りすぎる大きな雲が遠い場所へ人の心を誘う時 それは思い出の中にいた ある朝目が覚めて 懐かしさとともに青空が目…

日本語はメジャーな言語

日本語は 古く 多様で 漢文化と西欧文化を咀嚼したことで 筋金入りのものすごく発展した言語になっています。 世界の中でともすればマイナーな言語と思われがちですが 使用人口で世界ベスト10に入っていたと思います。 さらに 15世紀には人口でいえば、…

小説の合評会というものについて HF

合評会について① 修正版 わたしは福岡の文芸誌らむぷに10年所属して20編の小説を書いた。会費3500円と年に2回の出版のたびに3万円ほどかかったので半年で5万円ほどになる。そして出版すると半年に一度の合評会が5時間くらい行われた。 一人あた…

辻邦生で文学を学ぶ  海部

文学を最速で学ぶ方法は辻邦生の文学エッセイを読を読むことです。小説とは何かが完全にわかる。その上で偉大の長編を一つ読む。それで理解を実感できる。 特にこれを全部読んで理解できたら文学がくっきりと見える これを読むと小説とは天地創造なのだとわ…

その少年   海部

その少年 これは随筆ですから。(笑) 1 むかしむかしのことだった 海を越えたあるとこに 何をやっても ほんとにだめな とろくてまぬけでそれでいて 言い訳だけは哲学的な そんな少年がいたんだと 野球をやればマウンドで 相手チームがヒットの山 バットを…

一通の電子メール~学生時代の同級生の女の子が40台半ばで子供を残して亡くなった時死後友人たちにメールが来た F

1通の電子メール あれはもう15年も前のことだ。 学生時代の友人から電子メールが来た。彼とは東京と福岡にいても時たまメールで近況報告する仲だったので、いつもの変哲もないメールだと思った。 私は軽い気持ちで何気なく読んだ。 「私の人生を彩ってく…

【創作のためのデッサン】「夏の風とともに」

一回に「ワン パラグラフ」の連載小説。時々多めに。 「 夏の風とともに 」 ① その年のビーチは暇だった。8月になっても梅雨が居座り続け気温だけが上がって行った。 峯健司のバイト先の「海の家」も毎日ぱらぱらの人出だった。時給は変わらないからとても嬉…

【SF小説の創作ノート】滅亡からの旅立ち|第一章第3話<ツキヨミの姿>

宇宙艦ができるまでは月面基地に一端設置されたコンピューターミカエルは探査艦ツキヨミの設計と製造のほぼ100%を請け負った。製造器具に内臓されたコンピューターもみなミカエルソフトであった。 ミカエルはツキヨミの動力に重力牽引装置を作った。これ…

【SF小説の創作ノート 出だし部分】宇宙探査艦月読命(ツキヨミノミコト) 第一章 第2話 太陽膨張論と二つのコンピュータ【海部】

宇宙探査艦月読命(ツキヨミノミコト) 第一章 第2話 太陽膨張論と二つのコンピュータ スーパーコンピューターミカエルは、各国が誇るAIのすべてをつないだ時に現れたスーパーAIアースを宇宙船用に改変したものである。 アースは限りなく脳に近く思考するように…

【これは本格SF小説のちゃんとした出だしだ!】宇宙探査艦月読命(ツキヨミノミコト) 第一章 第一話 ツキヨミとミカエル 海部

宇宙探査艦月読命(ツキヨミノミコト) 第一章 第一話 ツキヨミとミカエル スーパーAIコンピューター「ミカエル」は声を無限に持っていたが、司令室では2種類を使い分けていた。 宇宙船 「ツキヨミ」の運行については女性の声で、未知との遭遇や緊急事態や戦闘に際…

【創作のためのデッサン】『旅人の物語』第3章<馬車で薔薇の家に着く>

旅人の物語 第3章 「馬車で薔薇の家に着く」 馬車の移動は夜行われた。 体を休め、眠っている間にウィーンからアルプスへの旅も終わろうとしていた。 馬車の窓から上空が紫色に染め上げられるのを眺めた。もう何度も太陽のもとで歩き、夜になると憩いの時を…

旅人の物語 第3章 「馬車」① 第二稿 海部奈尾人

旅人の物語 第3章 「馬車」① 第二稿 馬車の移動は夜行われた。 体を休め、眠っている間でさえ、船と同様動き続けることができるからだ。太陽のもとで歩き、夜になると憩いの時をもち、あまりのも遠さのため目的地を考えることなく、いつも翌日の天気を気に…

ギリシャ神話の彼方に  第一章 第一話 辻冬馬

ギリシャ神話の彼方に 第一章 第一話 ********************** 夏の太陽を見ると古代ギリシャを思いだすのは、ギリシャ人の生まれ変わりだからではないのか? 遠藤光司がそう思ったのは小学校6年生の夏休みだった。あの頃は、ギリシャ…

馬車 海部奈尾人

馬車 まずは歩いた。するとそよ風たちが頬を流れるのだった。 最初の旅は急ぐ旅でもなかった。鳥が空たかく丸を描いて飛んでいた。時々立ち止まって大きく空気を吸い込んだ。 それから馬車の時代が来た。馬にまたがり駆けるものもいた。私は、馬車に揺られて…

函館の花火大会|大学3年の時の北海道旅行

1982年の夏。 あれはまだ青函連絡船が北海道と本州をつないでいた頃のことだ。 まだ国鉄が全国の鉄道を管理しており、地域ごとに周遊券という切符が発行されていた。 20歳の私は仲間と北海道の周遊券を購入し、これで2週間、普通電車なら道内を乗り放題…

若きシヴァとオシリスに吹く風  海部奈尾人

レムリア文明最後の女性大統領シヴァと、それに仕える脳力者オシリスは若い時ともに同じ学園で過ごした。 ******************** 蝶が飛ぶ。 蝶は風そのものとされていた。見えない風の動きを忠実に再現して飛んでいる。人は蝶を見ること…

ある移住 第6章から19章を省略 【第20章 最後の審判】海部奈尾人

シヴァ大統領はオシリスたちの思念の凝縮した泡の中にいる。 その泡の表面はエネルギーが発光し、光り輝く玉になった。 そしてオシリスたちは今や物体としての在り方をやめ、エネルギー存在として、シヴァ大統領の周りを守るように浮かんでいた。 人々は空に…

ある移住7/27  第2章【間に合わない!!】海部奈尾人

脳力者の長オシリスの警告を受けた大統領シヴァは大避難計画を練るが決断できない議会のせいで実行が遅れる シヴァ大統領はオシリスに命じてできるだけ多くの都市に、大洪水のまじかなことを伝えようとした。脳力者のいる都市はあちこちに点在していた。思念…

ある移住7/27  第一章【大洪水へのオシリスの警告とシヴァ大統領の苦悩】海部奈尾人

ある移住7/27 第一章【大洪水へのオシリスの警告とシヴァ大統領の苦悩】 1・ 私たちの知る年代で測ればそれは西暦紀元前1万2000年のことだった。 日ごとに海面が上昇していく様は、港の桟橋が干潮時でも水の中にあることからも誰の目にも明らかだった。 こ…

文学する とはなにか? |「哲学する」ということばあるけれど

「文学する」とはなにか? キルケゴールやヤスパースは 哲学的思索をしたり、何かを体験して哲学的気づきや驚きをすることを 哲学する と言いました。 それは、カントを読むだけではダメで、読んで自分の頭で、何かを深く感得する状態をら言います。また、書…

小説『ふたり』下書きデッサン

「ふたり」 神木はカーナビと前方の道路を素早く見比べながら、 狭い路地を運転していた。 古い街並みに情緒を感じながらも 、助手席の千草のおしゃべりに少し うんざりしかけていた。 普段は千草と過ごす時間は穏やかで 、2人の会話もそんな時間にふさわし …

ホメロスオデュッセイアを通読した 古荘英雄

ホメロスとはなんだ? 昔は世界文学全集を読む人が今よりはずっと多かった。 だいたい、その第一巻はシェイクスピアで第二巻がゲーテであったのではないかと思う。 ところが、一部の全集では 第一巻ではホメロスの叙事詩だった。 イーリアス もしくは オデュ…

ホメロスのオデュッセイアを超名作と思う理由  古荘英雄

ホメロスの表現の特徴が、昔はなじめず読むのを妨げていた。 それは誰かが話だすときに 人であっても神々であっても 必ず形容の表現が入ることだ。 必ず入るのである。 思慮深いオデユッセウスが言うには 利発なテーレマコスが言うには 運命を動かすゼウス神…

ホメロスのオデュッセイアを読んでいる 古荘英雄

ゲーテの「若きウェルテルの悩み」でホメロスを知った 若きウェルテルの悩みと言えば 昔は誰でも知っていたし、 ストーリーくらいはみんな知っていたし 読んだ人も多かった。 失恋してピストル自殺するのだが 今時は失恋しても自殺をせずストーカーになるか…

【ぼくらの人生のラプソディ】 クィーンのフレディ・マーキュリーが最後にボヘミアンラプソディーを歌う 海部奈尾人

前書き ボヘミアンラプソディーを見た。 単純に感動する。最後のウェンブリーのコンサートが、それまでのフレディの人生とクイーンの音楽ををなぞるようになっている。 ****************** ボヘミアンラプソディを聞きながら触発されて書…

説明ではなく創造することが文章のきも

アレキサンダーは大勢の兵士を従えた、は小説としてはあってはならない文章である ① 続き これを二アレキサンダーの視点から書くと王は自分の陣地に大勢の兵士が溢れているのを見て満足だった。自分の中に蘇ったデルフォイの神々が雄たけびを上げるのを感じ…

【小説文の良し悪しは主語で決まる】「アレキサンダーは大勢の兵士を従えた」では読者はイメージできない|辻邦生パリの手記より

辻邦生が紹介している小説文書き方の事例 「アレキサンダーは多くの兵士を従えて遠征にでた」 と 「多くの兵士がアレキサンダーに従って、ともに遠征に旅だった」 の比較がある。 私見であるが 「アレキサンダーは多くの兵士を従えて遠征にでた」 という文章…