【ブログ版】世界の名作文学を5分で語る|名作の紹介と批評と創作

YouTubeチャンネル『世界の名作文学を5分で語る』のブログ版です。世界と日本の名作紹介と様々な文学批評 そして自作の詩と小説の発表の場です

ホメロスオデュッセイアを通読した 古荘英雄

ホメロスとはなんだ?

昔は世界文学全集を読む人が今よりはずっと多かった。

だいたい、その第一巻はシェイクスピアで第二巻がゲーテであったのではないかと思う。

ところが、一部の全集では

第一巻ではホメロス叙事詩だった。

もしくは

だった。

ホメロスは言わずとしれた古代ギリシャの吟遊詩人で

この二つのギリシャ英雄叙事詩をまとめ上げた天才詩人と言われる。

ヨーロッパ文学の根源的作品でもある。

アイネーエスという大作もホメロスの二番せんじである。

またトルストイは晩年ホメロスだけが詩人であるとシェイクスピアをこき下ろした。

ゲーテホメロスこどが詩人であると敬服しており

若きウェルテルの悩みではウェルテルはことあるごとにホメロスを読んでいた。

またシュティフターの作中人物もホメロスをよく読んでいる


神学校などの入試には古代ギリシャ語とラテン語が必須だが、

古代ギリシャ語の読みものとしてはプラトンギリシャ悲劇よりも

ホメロスこそがギリシャ語の神である。

またフランスでは20世紀後半に至るまでエコールノルマルという

日本の東大にあたる大学では

古代ギリシャとラテンの古典を学ぶのが主であり

これは東大で四書五経を学ぶのが主であるというようなものだ

ホメロス

ギリシャ語として六脚韻=ヘクサメターを駆使して書かれていて

そのリズムの響きを聞くとギリシャ人はアテナイ女神やゼウスなどの声や姿を

幻聴や幻視で見聞きしていたという説まである


ヨーロッパ叙事詩文学の源流地

日本文学は短い文章を職人技的に磨くので短歌や短編小説などが主流となるし、徒然草方丈記などの随筆も一章づつは短い。

叙事詩と言われるものは平家物語だが、あのようなものはそれほど多くない。

だがホメロスイーリアスオデュッセイアはわれわれが平家物語を見聞きする感覚ににているかもしれない。

トルストイはその戦争と平和、アンナカレーニナなどの長編はもちろん自分の全作品をホメロスの匂いがする、というようなことを言っている。

ホメロストルストイを海にたとえ、叙事詩精神がヨーロッパ精神であると語ったのはトーマス・マンであり、彼もまたヨセフや魔の山などの叙事詩的作品を描いた。トマス・ハーディが一番書きたかったのは詩でも小説でもなく叙事詩だったという話もある。ナポレオン戦争に材をとった「覇王ら」などはそうしてできた作品だる。

はじめてホメロスの面白さが分かった


若い頃読んだときには、すべての登場人物と神々に、煌めく眼のアテナイ神とか、智謀に飛んだオデュッセウスとか勇猛なメラネオスとか、必ず形容しがつくので読みづらかったが今はそれが古代人の生活を感じさせて心地よかった。

また神々が登場し、しゃべったり助けたりするのもリアリティがないと思っていたが、今は逆だ。古代ギリシャ人にはそれが現実だたったのだ。彼らはその思念のうちに現実に神神がそのようようにかかわってきたのだと認識して生きていた。だから神々なしに人間はいないのだという、そういう世界なのだということがわかた。だから空想物語ではなくて、古代ギリシャ人にとってはこれは現実の話だったのだということがとてもよくわかったのである。


そうしてみればイーリアスもまた面白いことだろうが、いまのところはオデュッセイアをさらにじっくりとしばらく味わって古代ギリシャを垣間見たいと思うのである。

実際、ストーリー展開から細かいプロットから、これを紀元前200年頃に仕上げたというのはあり得ない、天才の中の天才だと思った。