【ブログ版】世界の名作文学を5分で語る|名作の紹介と批評と創作

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ギリシャ神話の彼方に  第一章 第一話 辻冬馬

ギリシャ神話の彼方に  第一章 第一話

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夏の太陽を見ると古代ギリシャを思いだすのは、ギリシャ人の生まれ変わりだからではないのか?

遠藤光司がそう思ったのは小学校6年生の夏休みだった。あの頃は、ギリシャ神話の印象が強く夢に出てきたものだ。そして屋根の上の太陽や森の中に差し込む光線や、海面に揺らぐ光の道のどれを見てもギリシャ神話の舞台の一つに感じられたのである。夏休みの読書感想文でギリシャ神話のことを書いているうちに生まれ変わりの発想がふいに現れた。

やがて成長して、ギリシャ悲劇を読み、ホメロスを読みプラトンまで読むに至って、自分はあの世界にいたのだと確信を強めていった。

歳月が過ぎ、30歳の誕生日に紹介された若い女性のヒーラーの家で、精神の中をかき回された。

そして自分もヒーラーも同じ映像を見た。エーゲ海に沈む夕日、葡萄酒色の海からの風に心地よく目とつぶっている。

ヒーラーは言った。

「間違いない。あなたは古代ギリシャ人の生まれ変わりです。それもどうやらホメロスその人の生まれ変わりです」