【ブログ版】世界の名作文学を5分で語る|名作の紹介と批評と創作

YouTubeチャンネル『世界の名作文学を5分で語る』のブログ版です。世界と日本の名作紹介と様々な文学批評 そして自作の詩と小説の発表の場です

【ぼくらの人生のラプソディ】 クィーンのフレディ・マーキュリーが最後にボヘミアンラプソディーを歌う 海部奈尾人

前書き

ボヘミアンラプソディーを見た。

単純に感動する。最後のウェンブリーのコンサートが、それまでのフレディの人生とクイーンの音楽ををなぞるようになっている。




******************

ボヘミアンラプソディを聞きながら触発されて書いた自分の詩です。中身は関係ないけどぼくとしてはボヘミアンラプソディーを聞きながら読み返したい
***********************



【ぼくらの人生のラプソディ】

かあさん

生まれた時 ぼくはみんなと同じように

泣いていた

そして幼いころはみんなと同じように

かあさんを見ると笑っていた

嬉しくて ほっとできて

ぼくは微笑んでいた 

かあさん

いつからか何かがずれてしまった

今は失敗した人生で

多くのものを失いすぎて

何を失ったかさえ思い出せない

人づてに聞いたのは

地位も財産も妻も家も友人もみんな失ったみたいだ

かあさん

小学校では喧嘩が強すぎていじめられた

力はあるのに優しすぎて

子猫が道端で死んでるのを見ただけで

わんわん泣いたりした

中学では不登校になった

あの頃は先生を信じたかったが

無駄だと知ってショックだった

できれば自爆テロで校舎ごとふっ飛ばしてクラスメートなどというしらけた言葉の持ち主たちと死んでしまいたかった

かあさん

ぼくはどこで間違ったんだろう?

ぼくはいつまでも笑って微笑んで

みんなが楽しく子猫も楽しく

暮らしていけることしか願っていたのに

なぜぼくは笑えなくなったんだろう

間違っているのは世の中のほうだと

叫んで人を殴り殴り返され

病院で母さんに再会したこともあった

間違っているのは世の中の方よと

母さんはぼくをわかってくれていた






かあさん

今はわかる

真実が

ぼくはほしかっただけなんだ

かあさんがぼくの誕生を喜んでくれたように

たくさんの人が自分の子供が生まれると

喜んでこの子のためなら何でもすると思っているのに

なぜ他人にはそう思えないのだろう

そんな愛された子供たちが

徒党を組んで人をいじめ

残酷な殺人を犯し

他人のお金を奪い取り

そうありたいというささやかな願いを踏みにじる

かあさん

真実を

求めてぼくは歌った

自分の行くべき道を

自分のいるべき場所を

生まれたときから求めていたんだと

最初はそれは全部かあさんだった

かあさんから離れて

ぼくはどこにも

真実をみつけられなかった

今も真実は意味不明の謎の国だ





そして

子供たちよ

ぼくは気づいたのさ

子供たちよ

ぼくがそうであったように

真実を求め傷つき憎み

君が行き詰まり助けてと叫びたくても

プライドとあきらめで声を出すことも忘れてしまった子供たちよ

真実を今

ぼくは知った

理解されぬ

孤独と寂しさと絶望を抱えて

何かを求めて夜道をさすらうのが

人の真実の姿なんだと

ああ こんな暗い夜道をさっさと歩き通して

温かいシチューが用意されたかあさんの食卓に

戻りたくても

真実は夜道と寒さと震える手足なんだ




かあさん

ぼくはいま伝える

歌にして

この孤独と

後悔と

絶望と

無念さと

自分への限りない腹立ちとを

子供たちに

子供たちよ

ぼくのあとをついてくるなと言っても

道はそれしかない

だからみんなで歌おう

絶望に覆われたこの空が

歌が響くときだけは

穴があき

光がそそぐ

そして人生の真実の向こうに

もっと大きな真実があるような気がして

ぼくらは生きることができるんだ

だから歌おう

ぼくが声を出して

君が声をだして

ぼくらの声が一つの声になって

この空にあの空に

君の空にぼくの空に

ぼくらのこの空に

響き渡るとき

祝祭の中ですべてを許し忘れ

ぼくらは人を越えることさえできる








たとえ祝祭のあと

暗い夜道に戻っても

君たちがあの空とあの歌を忘れることはない

子供たちよ

だから信じてくれ

ぼくらが歌い続ける限り

君の絶望は救えないが

君にも本当の空をみせてあげることができる

かあさん

そうやって歌いながらぼくは

歌うことがぼくの真実だったんだと

わかったんだ

この後悔もあの絶望も

やりなおせないけど

ぼくはこうやって歌えるんだと

わかったのさ

そして

あの空のもとで

みんなの声が響き渡るときには

ぼくももう一度笑える人間になれる








真実の向こうに広がる

限りない青さを

抱きしめて生きていくのさ歌い続ける限り

君の絶望は救えないが

君にも本当の空をみせてあげることができる

かあさん

そうやって歌いながらぼくは

歌うことがぼくの真実だったんだと

わかったんだ

この後悔もあの絶望も

やりなおせないけど

ぼくはこうやって歌えるんだと

わかったのさ

そして

あの空のもとで

みんなの声が響き渡るときには

ぼくももう一度笑える人間になれる

真実の向こうに広がる

限りない青さを

抱きしめて生きていくのさ