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【SF小説の創作ノート】滅亡からの旅立ち|第一章第3話<ツキヨミの姿>


 宇宙艦ができるまでは月面基地に一端設置されたコンピューターミカエルは探査艦ツキヨミの設計と製造のほぼ100%を請け負った。製造器具に内臓されたコンピューターもみなミカエルソフトであった。

ミカエルはツキヨミの動力に重力牽引装置を作った。これはアースが発明したものを転用したのだった。

 原理はこうだ。


 宇宙船の前方に重力場を作る。宇宙船の質量とのバランスで規模と距離はミカエルが計算した。そしてその重力場が空間に、坂道を作ることになる。

 アインシュタインの有名な重力モデルがあるが、平面におもりを置くとそこがへこんで、坂ができる。惑星の公転は太陽というおもりが作ったへこみを、ぐるぐる回っているということだ。

 重力場を重くすると、へこみは坂ではなく崖のようになる。すると亜高速で宇宙船は飛ぶ。

 ちなみにこの重力場が究極的に重くなるとブラックホールとなるのだ。

探査艦ツキヨミは目の前にできた重力の坂道を延々と転がり続けることで移動する。そこに地球の空を飛ぶための工夫は一切不要だ。翼も流線形も空気を利用する装置だが宇宙空間では役に立たない。

宇宙空間の高速移動の問題点は「宇宙のちり」=宇宙塵との衝突や亜高速時にぶつかる分子の影響により艦が傷むこと、そして他の恒星からあびる宇宙線だった。地球では太陽線をバンアレンタインが守っている。なければ生命は死滅する。

 ミカエルは、ツキヨミの表面を実際の小惑星から採取した岩石で覆って、それを衝突するものと熱線からの盾とした。そうしてできあがったツキヨミの形は「月」にそっくりだった。大きさは日本の琵琶湖ほどであった。

 惑星や衛星の球体は、生命を運びながら宇宙空間を飛翔するために最も合理的な姿なのであった。

月そっくりの宇宙探査艦は当たり前のように「月読」と命名されたのだった。(続く)


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