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【これは本格SF小説のちゃんとした出だしだ!】宇宙探査艦月読命(ツキヨミノミコト) 第一章 第一話 ツキヨミとミカエル 海部

宇宙探査艦月読命(ツキヨミノミコト)

第一章 第一話 ツキヨミとミカエル

スーパーAIコンピューター「ミカエル」は声を無限に持っていたが、司令室では2種類を使い分けていた。

宇宙船 「ツキヨミ」の運行については女性の声で、未知との遭遇や緊急事態や戦闘に際しては男性の声がそれに加わる。それぞれ特定の声で統一されていた

千人の乗員が運航のための仕事に費やす時間は、いつも二つの声と一緒だった。が、それ以外の自分の時間には、ミカエルの声は人それぞれの、様々な要望に応じて無限の変化を見せるのだった。

ツキヨミの大きさは淡路島ほどであった。あるいは琵琶湖ほどであった。

アメリカと日本とEUで作られた宇宙委員会に、中国とロシアが参加して、月面基地が3年かけて建造された。その後そこで2年かけてツキヨミは建造された。もっともその前にミカエルを作るのに日米欧の共同作業で10年かかっていた。ミカエルの能力でその後の作業をしたから、後の作業は5年で済んだのである。

正式名称「地球艦隊所属宇宙探査艦月読命(ツキヨミノミコト)」は、表向きには包括的宇宙探査の名目で出港して1年が経過していた。本来の任務は別の太陽系で人類の移住できる場所の探索だった。もちろん太陽光線のなかの成分や、大気や土中成分などから完全にある星の生命体が別の惑星に移住できる場所などはありえない。ガラスドームと科学設備を使って、エネルギーの補充を受けつつその設備が半永久的に維持できる場所の探索ということだ。同時に、ツキヨミ型の艦で、恒久的に人間が暮らせるかの実験でもあった。

太陽系で地球の生命が存続できる時間はあと200年ほどだということが証明されてしまったのだった。(続く)