【ブログ版】世界の名作文学を5分で語る|名作の紹介と批評と創作

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ある移住7/27  第2章【間に合わない!!】海部奈尾人

脳力者の長オシリスの警告を受けた大統領シヴァは大避難計画を練るが決断できない議会のせいで実行が遅れる



シヴァ大統領はオシリスに命じてできるだけ多くの都市に、大洪水のまじかなことを伝えようとした。脳力者のいる都市はあちこちに点在していた。思念の力で情報は飛び、受信する脳力者のネットワークを伝わっていた。

あるところに美しい湖がありその海岸線にそって繁栄する都市があった。それは現在は黒海と呼ばれる平地だった。

当時、そこは地中海と呼ばれる海から天然の防波堤で守られていた。大洪水が起きたとき、この壁は圧倒的な水圧に耐え切れず崩落し、地中海の水が黒海平野に流れ込んで、そこにあった都市は海底に沈んだ。その崩落あとが現在のダーダネルス・ボスポラス海峡である。


さてこの黒海平野に住む一人の脳力者がオシリスの思念を受信した。


「やがて洪水が来て今の都市はすべて水没する。しかし都市まるごとの避難はすべての都市で拒否された。この声が聞こえたら巨大な船を作りなさい。その船にあなたがたの都市の資産を載せて、その日に備えるのです」


ノアと呼ばれるその男は、都市の人々に伝えた。ある人々たちは今のトルコ半島という山岳地帯に移住した。しかし、ほとんどの人たちはそんなことは起こらないと言った。

ノアはその日が来たら少しでも大勢を救おうと、巨大な箱舟を作って備えた。

地球規模の洪水が起こったら、あの防波堤が決壊して海がじかに黒海平野を覆うことをノアは知っていたのだ。

オシリスの思念に返事をするほど、ノアの脳力は強くなかった。