【ブログ版】世界の名作文学を5分で語る|名作の紹介と批評と創作

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陶淵明「飲酒」 超訳すると素晴らしいモダンな近代詩になる 

陶淵明「飲酒」超訳  

<酒飲みの夕暮れの歌>

 

私は黄河を失った晋の末裔だ
長江の河口に逃げのび
そこに拠点を作った国の役人として
日夜励んできたものだ
だが今や私は
人の世の流れから抜け出した
それも街中に居ながらにして抜け出したのだ
街中にある庵からは不思議なことに
馬車や人々の往来のざわめきが聞こえない

 

人々は私に聞く
なぜ人中にいながらにして
その静けさを持てるのかと

 

私は答える
心がここにいないからだ
私の心は街中に居ながらにして山水に遊ぶ
すると周囲の風景が峡谷に変わるのだと

 

私は菊を東のまがきで採り
悠然たる面持ちで南のかなたの山々を眺め渡す

 

山々は夕日に染め上げられ
この世の物とは思えないほど美しい
街中からそれを眺めることができるではないか

 

山の夕日を背景に
飛ぶ鳥たちが巣に連れ立って帰っていく

 

あそこにこそ真実がある
真実をつかみたいと若いころから思ったが
それはいつもすり抜けて
道に迷った役人暮らしが続き
すべてを捨てて世間の流れから離れてみると
手は届かぬが見上げれば
いつも鳥たちが夕日を浴びて輝かしく飛来する

 

あれが真実だ
人生の真実はあそこにある
遅すぎたかもしれないが
私は真実と毎日出会えるようになった

 

ああしかし
これらの言葉は意味ないことだ
消えていく言葉だ
忘れいく言葉だ

ただただ真実はあそこにある

結盧在人境

而無車馬喧

問君何能爾

心遠地自偏

采菊東籬下

悠然見南山

山気日夕佳

飛鳥相与還

此中有真意

欲弁已忘言

 


いほりを結んで人境じんきょう

しかも車馬のかしましき無し

君に問ふ何ぞ能くしかると

心遠くして地おのずかへんなればなり

菊を東籬とうりもと

悠然として南山を見る

山気さんき日夕にっせきなり

飛鳥相ひちょうあともかへ

此のうちに真意有り

弁ぜんと欲すれば已にごんを忘る

 

李白杜甫超訳はこちら

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