李白 牀前 月光を看る
牀前 月光を看る
疑うらくは是 地上の霜かと
頭を挙げて 山月を望み
頭を低れて 故鄕を思う
<夜の静けさの中で月を見て>
夜 人々がもう横になって
今日の日に別れを告げて
眠りに入ろうとする時刻
月が私のベッドを照らしていることに気づく
あまりにもくっきりと
月光は忍び寄り
あたかも霜が張ったかのようにさえ
私には思えたのだった
心を揺さぶれて
私は一人起き上がり
はるかな山々を眺める
月はそこから今登ってきたところだった
はるか故郷にも今
この月はやさしい光をなげかているだろう
わたしの愛する人々に今
この月はやさしく囁きかけていることだろう
願わくばひとり離れたこのわたしの
夢をみていてほしいと思う
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春を迎える悲しみの歌(春望)超訳 Toho
「内乱」が私たちの都長安を破壊した
家々が燃え 宮殿が蹂躙され
数えきれないほどの人々が死んだ
無数の悲嘆と涙が街中に溢れているにもかかわらず
長安を取り囲む山や
長安に注ぎ込む河は
何も変わることなく
春を迎えて 草木が再び生い茂る
ああ
人の世の姿は私の奥深く悲しみを植えこむ
人の心を癒すはずの花を見ても涙が止まらず
家族との別れの辛さに
軽やかな鳥の鳴き声にさえ心が傷む
未だに戦いの狼煙が果てることはなく
いつしか家族からの音信もまれになり
待ちわびる私の心には
手紙の中の
子供たちと妻の筆跡は
何を犠牲にしても抱きしめたいものなのだ
世界の終わりを目の当たりにした私の心は
もう耐えきれず疲れ果て
白髪が頭を覆うばかりだ
そして何気にそれは薄くなっていく
私も世界のように終わりつつあるのだろうか
もう私の肉体は若き日の面影から遠く離れてしまった
長安がそうであるように
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