文学創作 小説 詩 ポエム エセーのためのカフェ
その男は未来に向かって突進できず
夜の奥地で飲んだくれていた
酒の中にずんずん分け入っていけば
その深みは日々の様々な困難から
わずかの隙間でしばしの間守ってくれる
だが輸血しているようなもので
それだけではまともに昼を生きることができない
酒と女とのおしゃべりの染渡った体を起こす時
ばかばかしく左右によろける足取りで
まさにそうやって進む人生航路を
放り投げつつ行く末を憂え
生まれ来る諸々の意識をがぶ飲みする
夜明けの水平線を眺めれば
紫とばら色を惜しげもなく撒き散らす曙光
それはやがて来る真昼時にはあり得ぬ清浄さ
境目のきわどさが生み出した日々の奇跡
今日の日の大いなる足場が
純粋にならば生きることが出来ると告げる
酒が抜け頭の中に風が立つ
だが昇ってしまった太陽は凡庸であり
その光は何も語らない
そして地面に唾を吐いて
信号を無視してごみ箱を蹴飛ばして
一日を過ごして
やがてまた酒を口にするのだ