【ブログ版】世界の名作文学を5分で語る|名作の紹介と批評と創作

YouTubeチャンネル『世界の名作文学を5分で語る』のブログ版です。世界と日本の名作紹介と様々な文学批評 そして自作の詩と小説の発表の場です

自作の詩 酒と酒の狭間で  by 海部奈尾人


文学創作 小説 詩 ポエム エセーのためのカフェ


その男は未来に向かって突進できず

夜の奥地で飲んだくれていた

酒の中にずんずん分け入っていけば

その深みは日々の様々な困難から

わずかの隙間でしばしの間守ってくれる

だが輸血しているようなもので

それだけではまともに昼を生きることができない


酒と女とのおしゃべりの染渡った体を起こす時

ばかばかしく左右によろける足取りで

まさにそうやって進む人生航路を

放り投げつつ行く末を憂え

生まれ来る諸々の意識をがぶ飲みする




夜明けの水平線を眺めれば

紫とばら色を惜しげもなく撒き散らす曙光

それはやがて来る真昼時にはあり得ぬ清浄さ

境目のきわどさが生み出した日々の奇跡

今日の日の大いなる足場が

純粋にならば生きることが出来ると告げる


酒が抜け頭の中に風が立つ

だが昇ってしまった太陽は凡庸であり

その光は何も語らない

そして地面に唾を吐いて

信号を無視してごみ箱を蹴飛ばして

一日を過ごして

やがてまた酒を口にするのだ






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