【ブログ版】世界の名作文学を5分で語る|名作の紹介と批評と創作

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自作の詩 結婚する友の肖像   詩

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結婚する友の肖像  古荘英雄

          一九九九年四月十日 




もしかしたら幼い君は

積もった雪の下の

春に備える草木の営みや

成長に専念する虫たちの忍耐を

心に焼け付けはしなかっただろうか

あの頃ほっつき歩いた学生街で

君の目に絶え間ない向上心と

理想への射るような眼差しを見たのは

僕だけではなかった

君は故郷を捨てた亡命者の

不透明さと気丈さを兼ねそろえていた


やがて日本をも捨てた君は

より大きな広がりで繰り返した

ロンドンで喧嘩し 東京で歯を食いしばり

再びロンドンで学び

チュニジアの夜と香港の日差しのもと

客家のごとく刻苦耐労の精神で突き進んだ

その間君の心の底流に流れ続けていた映像は

幼い頃見た雪の下の草木と虫たちの営みであったと

僕は自分勝手な想像をしてしまうが

きっと当たっているはずだ


祖国へ

君は帰って来た

でもそれは本当に日本への帰還だったのだろうか

なぜなら君は祖国の敷居と同時に

彼女の心が持っていたある種の境目も

一足飛びに越えたのだ

まちがいなく

君は彼女に帰って来たのだ

彼女こそ祖国や故郷を越えた

君にとっての

絶対の帰還場所だったのだ

彼女から吹いて来る風によって

君の原風景は変貌を遂げ

溶けた雪が草の葉をきらきらと輝かせ

虫たちが楽園の到来を言祝ぐ


風の向きが変わった

これからは彼女と二人の旅となる

厳密には君の中に彼女がいて

彼女の中に君がいる

その混沌は

コミュニケーションの

極北を越えるだろう

君たちがその混沌を受け入れる限り

君たちは愛し合う葡萄酒のように

混ざり合い続けるだろう

そして今日誰もが

その事を願うために集まったのだ

それでは

言い古された言葉だが

グッドラック




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