詩
始原の足跡
それは道だったのだろうか
百万年前の
アフリカの大地に残る親子三(人)の足跡
それは生活というものの痕跡だったのか
誕生間もない新種の
サル科類人目ヒト種の(決してヒト科ではない)
餌探しの途中の偶然の一歩だったのか
それともそれは旅だったのか
漠然とした彷徨ではなく
どこかとは決まってはいないものの
はっきりと移住することを目的とした
出発だったのか
前向きというわけにではなく
楽園のような森の懐から
殺戮と孤独と
果てしない草原の広がりへの
絶望的な逃走だったのか
制御できぬ大脳という武器に
自らも振り回されつつ
獲物を殺し森を殺し同胞を殺し
殺しまくり止むことなく一歩また一歩
地球そのものを
焼き尽くすかのごとき歩みに自ら酔いしれ
忌むべき足跡を
無数に残すであろう未来への
ささやかな一歩だったのか
猛獣か天変地異が
止めてしまえば祝福を受けるような
痛恨の一歩だったのか
・・・・・・それでも三人は
そこを歩ねばならなかった
そしてその時その刹那 それは
最善にして唯一の道であったはずだ・・・・・・
・・・・・・故にまた
今
新たな一歩が必要である
どこかとは決まってはいないものの
別のものへの
確かな変化のために