文学創作 小説 詩 ポエム エセーのためのカフェ
風の終点
蝶々が風の化身のように
陽光の中を
ふわふわと流れ
大気の海の底で夢を見る
消えて行く風の囁き・・・
蝋燭の火を吹き消すほどもないけれど
確かに作られた羽の動き
すると次には周囲から坂を下るように
必然として空気が羽の下に入り込む
その補填の連鎖が大気をかき回し
次のそよ風を生み その果てに
台風をさえ呼び込む
その最初の一吹きの
別れの言葉
数え切れないほどの夢が
シャボン玉のように
あとからあとから湧き出る
その一つ一つはそっと現れ
ひっそりと消えていき
忘れられ記憶も届かぬか細い過去となる
何かが強烈にずれて
突然孤独になる
昨日幻だったものが今日の現実となる
このずれこそが真実というのであれば
泡のように生まれる日々の空しさの中
期限付きの輝きと震えをここに在らしめる
風の終点に立ち
海は凪いでいる
祝福のようなまどろみは少なく
悪夢の尽きることはない
せいぜい解放が時たま有り
しかし
解放後のその先へ行ったことがない
これまでそうだったし今もそうだし
しかしこれからは違うと
風の終点に立つたびに
いつも願うのであった
しかしそれは消え行く瞬間の最後の呟きであり
引き継がれる知恵ではなく
たどり着く気づきなのであった