【ブログ版】世界の名作文学を5分で語る|名作の紹介と批評と創作

YouTubeチャンネル『世界の名作文学を5分で語る』のブログ版です。世界と日本の名作紹介と様々な文学批評 そして自作の詩と小説の発表の場です

若き日はや夢とすぎ・・・・・・


創作 詩と小説 エセーと随筆


           

元々ぼくには大事な友達がいた

彼らと過ごした日々は

濃い原液のようなものであり

あの頃ぼくらは同じ空間や

ある種の心のムードを

共有していた


北海道で彼女が流氷に言葉を失う

信州で彼が青空に郷愁を感じる

そして東京にいたままのぼくが

彼らが戻ってきたとたん彼らの

記憶を分かち合える


でもそれは時がたつほどに薄くなる

時の水かさが増え

原液は薄められていく

ほおっておくと消えていくかもしれない

思い出しもしなくなるだろう


ぼくは思い出さなければならない

それらを次々に忘れていくのが

人生だと言えるのだが

それはぼくにとっては

何かの境を越えてしまう




ぼくはいくつかの原液に出会った

ほおっておくと

一番美しいものは溶けて混ざって

ただの水だけがまとわりつくのだ


だがぼくが大事にしている原液は

平和な時代の個人的な出来事で

それでいてなお

普遍的であり永遠の深さを持つ

それが忘れ去られた時代なのか


ぼくは年を取ったのだろうか