【ブログ版】世界の名作文学を5分で語る|名作の紹介と批評と創作

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自作の詩「薄明の歌」by Amabe


創作 詩と小説 エセーと随筆


薄明の歌


小鳥が薄明に歌う


夜明けから飛び出し

曙光と呼ばれ

空の一風景に堕すまでは

現れたことそのものが畏怖をもたらし

静謐の中で

森や山や海と

空との境目あたりで燃え上がる炎は

人々を平伏させ

眼差しの奥底にまで差し込み続ける

出現そのものが崇められ

何が燃えているかは問題ではなく

やがて登り切るとただの太陽であり

もはや神でなく

あの燃え上がる火の玉と

あそこに浮かぶ太陽は同じ一つのものと

わかっていながらなお

それは全く別の在り様であり

もはや全く別のものであるのだった


小鳥が薄明に飛び立つ




そのあとの物悲しさは

残された風景にによって語られる

だからふと見上げれば

去ったということそのものが

薄明の枯れ枝として

いつまでも

いつまでも揺れているのであった

そしてその振幅は

立ち去った鳥の

はばたきのエネルギーの

別の在り様であり

だからといって悲しみが

失われた命の

別の在り様であり

在りし日の笑顔や泣き声の

別のあり様であり

切り取られたかのように消えた未来の

別のあり様であると

わかっていたとしても

やはりそれは

曙光と上り切った太陽との違いのように

まったく違うなにものかであった




いつの日か転移したエネルギーが

またさらに別のものを生み出し

その時には悲しみは

悲しみそのものでありながら

在りし日も彼岸も飛び越え

不思議な配剤の末に巡り巡って

闇の奥からこの世ならぬ音を立てながら

曙光となって飛び出して来るだろう


小鳥が飛ぶ


在りし日

最後に見た光が

嬉しさに変わり

その嬉しさは

何に変わることもなく行き場を失ったから

それをくちばしで捕まえて

この世の渦の上に

そっと落としてやるのだ




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