【小説論 2022/5/7】
デッサンのように、好きな街の情景や、山の中や、海岸のことを書いていってみる。
すると、人々の歩く姿やそれぞれの人間関係、ビルの中のお店の数々、山道で聞く鳥のさえずり、ざわざわとする木々を吹く風、眺望、波音やカモメの飛ぶ姿、貝殻、太陽の乱舞する光、などを書くことだけで、とても幸せになる。
そしてやがてこの世界の見つめる視点に、人間の物語は自然発生のように生まれてくる。それは、世界の付属物であり、空間としての世界ができたら、時間としてのファクターが加わり、自然に一人の人間の動きが生まれてくるのである
つまりこれが小説であり、うがった角度から特別あつらえの恋愛物語や悲劇や喜劇を書こうとすると薄っぺらいシナリオ程度のものしかできない
たぶん１時間海の光景を書き続けて楽しいと感じる筆力がなければ、文学する小説はできない。もちろん文学しない小説はいくらでも作ることはできるが
文学と文学でないものとの差は明らかに国境のように存在するのだ
