最後の文学論|ヘミングウェイの手紙
友達本人が書くと、
「ぼくは元気、危険な任務も今のところない、安心して。母さんも元気で」
で、終わっていました。
ところがあるとき友人がけがをして、手紙が書けなかったときヘミングウェイが代筆しました。こんな感じ(海部創作)
「僕らの部隊はイタリアのオーストリア国境近くに駐屯してる、アルプスを遠くに望むこの場所は川が流れアドリア海が青く輝き、まるで戦争などほかの惑星の出来事のようです・・・・軍隊で一番の楽しみは食事です。15分くらいで食べ終わらないといけないけど、イタリア戦線の食事はフランスの戦線に比べてとても豊かでたっぷり煮込んだシチューもでます(海部創作)」
みたいな感じで話がすすみ、息子のことが克明にわかりお母さんはとても喜んだのだとか。
息子がありのままに書くより、息子以外の人が技法で書いた方がはるかに深い感動を読者に与えていたのです
なおこの話には続きがあります。
戦死したその友人に代わってなおしばらくの間、手紙を母親あてに出していたのだとか。
言葉の力はとてつもない。それは心からの叫びだからではない。練習の末に名人となったピアニストの演奏が感動を呼ぶように技量を身に着けた作者が書くことが人々に感動を呼ぶのです