未来
その日目の前に黄色い光の帯が見えた。おそるおそる触ってみると光の帯はぼくを包み込み、その内部で見上げれば、天の彼方からまっすぐに地上に差し込んだ光をぼくはさかのぼっているのだった。
やがてぼくの町が眼下に見えた。そこには今のぼくの想念がうずまく。そしてやがて町は点となりいつしか視界は青い地球が宇宙空間に浮かんでいる光景で覆われた。
やがてぼくの周りには7色の光の帯で囲まれる。ぼくを連れてきた黄色の帯のほかに、ピンクと赤と緑と青と黄緑と紫とが地球を背景に揺れていた。ぼくは何気なく紫の帯に触れるとやはり光は手の中に入り込みそのまま今度は地上に向かってぼくを運ぶのだった。ぼくはその町を見下ろしやがてその町に降り立った。よく見ると天から紫の光が差し込んでいた。そしてぼくはその町のオーラが見知ったものとは違うのだとわかった。
ぼくは目の前のマンションに入り、301号室へ行く。ドアが開き男が出てくる。60歳になったぼくが今日来ることは知っていたとつぶやいて奥に通してくれた。そしてぼくと彼の間に広がる長い長い時を隔てながらなお、本人同士の愛着によって二人は結ばれぼくは彼に尋ねるだ。
「今はどう?」
彼が口を開く。ぼくは聞きたいだろうか?自分の人生の行く末を?しかし元気でなんとかやっているらしい彼の姿からは出てくる言葉が悲劇的とも思えない。しかし彼の表情にある翳りはなんなのだろうか?ぼくには知らない未来の出来事の果てに今彼はこうして笑っているのだろうか。