創作 詩と小説 エセーと随筆
1987年の詩
キャット
煙草を吸う男を見た
キャット
それは初めて乗る電車で
そして二度と乗らない電車でのこと
京都発金沢行き
北国へ向かう数時間
ぼくは一人で夢を見たのだ
キャット
とある窓の内側にいて
どうでもいいことを毎日しゃべり
やがて口を閉ざして
大通りを行進する
そのための世界のように大きな犠牲は
断固としてしょうがないと
興奮して叫んでいた
キャット
都市は未来へ向かう
それが間違いでも
とにかく
どこにも行かないということはない
開かれた目と足で
冒険のようなことが行われるのだ
ぼくが思うのは
でも
ぶらぶらと歩きながら
煙草を吸う男の姿だ
電車ははじめての駅に着く
ホームで肩をたたかれて
振り向いた時の一瞬の光景が
今でもずっと心を貫く
キャット
1980年には一人だった
そのあとの何年かを
火にあたりながら
同じことを何度もしゃべり
ある種の自由港から
何でも空想してみせた
君を破壊するものをぼくは見る
君はでも負けることがない
ぼくには君の先行きが見える
君は踊る
元気に
それが何よりだって
ぼくは何度も言っただろう
忘れただろうけど・・・・・・
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