【ブログ版】世界の名作文学を5分で語る|名作の紹介と批評と創作

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自作の詩「最後の回想」古荘英雄

創作 詩と小説 エセーと随筆

最後の回想


一つの光景

古い街を歩きながら

ふと自分を呼ぶ声がして振り返る

そこには昔の友がいて笑っている

振り返るために首を反転させている間は

何も思わず何も見ていなかったが

後ろを向き終わり視点を定めた時

目に入る懐かしさは

多くのものを思い出させる。


再会するまでの間に

30年が過ぎた


別々の人を愛し

別々の場所で暮らし

別々の道を歩いた

ぼくらにはもうやることは残っていない

そんな時に

30年前と同じように

友はぼくの肩をたたく


30年前に振り向いた時も

彼女がいたのだ

あれからあまりにも多くの登場人物たちが

目の前でつまらぬ騒ぎを起こしては消えていった

ぼくはいつも口だけ出していたが

今は一人で歩いている


彼女のまなざしは相変わらず

登場人物の輝きを持っていた

ぼくにはそもそもはじめから

なかったものが彼女らしさだ


・・・・・・・・・・

元気か

元気で何よりだ

もうすぐ死ぬだろうが

それまで元気で

・・・・・・・・

ありがとう

あなたたは死なない人みたいね

・・・・・・・・


そう見えるのは

ぼくが生きたことがないからだ

ぼくは存在しただけだったから

生きていても死んでいても同じ在り様なのだ

ただ君が死ぬのは残念でならない

この世界でぼくが目にしたもののうち

君以外には見るべきものはなかったからね


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