創作 詩と小説 エセーと随筆
様々な風の回想
風 夏の神宮球場から
街のバーへ
失ったものについて
女友達と話す
風 彼は出発点というあやふやな場所で
冬枯れの木々を眺め
ある種のコペルニクス的転回を
未来へ向けてばらまいた
風 時速160㎞の車の中で
音楽を聴きながら煙草をくゆらせ
今 どこに向かっているかを忘れる
天国へのスピードだと気づくまで
風 人々はいつも厳粛に歩いた
黒い服を着て声を潜めた
抑えられた自由について
独裁からではなく共同体の圧力について
風 標高1623mの秋は
もうなんでもいいやっていう感じで
でも 今が最高なのだと
「もう二度とこんないい時代はないだろう ベルリン」みたいな感じで
風 吹き抜けて
ざわめきが起こり
頭の中さえ通り抜け
拡散し 大気の中へ紛れていく