【ブログ版】世界の名作文学を5分で語る|名作の紹介と批評と創作

YouTubeチャンネル『世界の名作文学を5分で語る』のブログ版です。世界と日本の名作紹介と様々な文学批評 そして自作の詩と小説の発表の場です

「自作の詩  超音速攻撃ヘリ エアーウルフ」    by辻斗真

文学創作 小説 詩 ポエム エセーのためのカフェ

エアーウルフ  マッハ1プラス  by辻斗真


「超音速攻撃ヘリエアーウルフ」というアメリカのテレビ番組がかつて人気を呼んだ。アフリカの砂漠で恋人を殺した男にミサイルを撃ち込み、最初の攻撃で男はあとかたもなく吹っ飛んでいるにもかかわらず、全弾打ち込みむなしく砂漠が爆発を続け、やがて弾が切れても発射スイッチを押し続ける主人公に、ナビゲーターの相棒が、そっと肩に手をかけながら言った。  

  <It is done. >


マッハ1プラス 


東京駅の近くの和食の店で

お猪口に丁寧に日本酒を注ぎながら

堺から出てきたぼくに

彼女は彼と婚約したと告げる


その夜ぼくは

エアーウルフに乗って雲の上を真夜中に

人間の感覚がつかめないスピードにすがって

やるせなさと寂しさがぼくにやって来るより早く

逃げていきたかった

今すぐであれば

色々なものが

ぼくの意識にすがりつく前

ショックの直後でその前後の時間が

まだ未整理で混沌としているのであれば

スピードがすべてを振り切り散らすのだと

確信していたのだ


恋人が死んで

殺人者を吹っ飛ばした後になお

ミサイルを撃ち込み弾丸が切れた後なお

いつまでも発射ボタンを

押し続けるパイロットのように

無意味に加速ボタンを押し続ける

最後には地球の大気に溶け込んで

偏西風にでも生まれ変わればいい

やけになるっていうのは

どういうことかつきつめて考えると

それは一種の悟りでもある

それは過去と未来の関連を切る

<前後アリトイエドモ前後裁断セリ>

この言葉の変種であろう

言葉はすでにすべて散らばり刻まれ

あとは変種がそこいら中に

沸き起こるが

変種を生むパワーを持つ言葉は少ない


関西に行ったらヘリコプターの免許を取ろう

八尾に飛行場があって

ヘリの免許もそこで取れるらしいから

遊びに来たら空から大阪を見よう

などと言って船橋駅で別れた

夏の午後手を振る彼女の姿を

新幹線の中では思い出しながら

あの歌を聴き続けたのだった

ヘリコプターの操縦練習の夢・・・・・・


よくぼくはそのヘリで

当時の共産主義国家に

監禁されているすべての人を

一人づつ助けるシーンを想像したものだ

命を懸ける大儀があり行動があり能力がある

それは幸せなことだ

やけになっても人間でいる理由を持てる

そしてそれには

エアーウルフが必要なのだった

本気でやろうと思えば

エアーウルフ特殊航空隊を設立して

世界中で一年中

助け続けなければならない

世界は絶望的だ

絶望から出発するしかないのだ

何の光明もないから


やけになって

ぼくも世界も変わり続けるのだ

決して進歩ではないが

違うフォーメーションになって

できることだけをやろう

どうしたって

あらゆる戦いは残るのだ

地球の生命が他の生命を食べるシステムで

生存している限り戦いは消えない

全面的なことは天が考える

人間はターボの加速ボタンを

押すだけだ


とりあえずぼくは

般若心経を丸暗記した