三好達治の詩の紹介です
一緒に味わって行きましょう
37歳の時の「大阿蘇」
と同じ阿蘇を舞台にした39歳の時の「草千里浜」です
三好達治をもって日本語の詩は完成したんじゃないかと個人的には思います
動画で詳しく語っています
動画中の伊勢物語の和歌です
月やあらぬ春や昔の春ならぬ
わが身ひとつはもとの身にして
大阿蘇
雨の中に馬がたつてゐる
一頭二頭仔馬をまじへた馬の群れが 雨の中にたつてゐる
雨は蕭々と降つてゐる
馬は草をたべてゐる
尻尾も背中も鬣も ぐつしよりと濡れそぼつて
彼らは草をたべてゐる
草をたべてゐる
あるものはまた草もたべずに きよとんとしてうなじを垂れてたつてゐる
雨は降つてゐる 蕭々と降つてゐる
山は煙をあげてゐる
中嶽の頂きから うすら黄ろい 重つ苦しい噴煙が濛々とあがつてゐる
空いちめんの雨雲と
やがてそれはけぢめもなしにつづいてゐる
馬は草をたべてゐる
艸千里濱のとある丘の
雨に洗はれた青草を 彼らはいつしんにたべてゐる
たべてゐる
彼らはそこにみんな靜かにたつてゐる
ぐつしよりと雨に濡れて いつまでもひとつところに 彼らは靜かに集つてゐる
もしも百年が この一瞬の間にたつたとしても 何の不思議もないだらう
雨が降つてゐる 雨が降つてゐる
雨は蕭々と降つてゐる
われ嘗てこの國を旅せしことあり
裾野には青艸しげり
尾上には煙なびかふ 山の姿は
そのかみの日にもかはらず
今日もかも
思出の藍にかげろふ
うつつなき眺めなるかな
しかはあれ
若き日のわれの
われをおきていづちゆきけむ
そのかみの思はれ人と
ゆく春のこの曇り日や
われひとり齡かたむき
はるばると旅をまた來つ
杖により四方をし眺む
肥の國の大阿蘇の山
駒あそぶ
名もかなし艸千里濱
一点鐘も大好きな詩です