【ブログ版】世界の名作文学を5分で語る|名作の紹介と批評と創作

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リルケ「秋の日」|形象詩集最高傑作の孤独がしみわたる詩

リルケ 秋の日

神品芳夫訳
 
主よ 時です まことに夏は偉大でした
いまこそ 貴方の影を 日時計の上に投げ
野に秋風を吹かしめたまえ
 
残れる果実に 最後の実りを命じたまえ
そしてなお 二日の温暖を恵み
かれらを成熟へと走らしめ やがて
最後の 甘き果汁もて 豊潤の葡萄酒となしたまえ
 
いま 家を持たぬものは ついに無宿
いま 孤独のうちにあるもの いずれは ひとり
眠られぬ夜 本を読み 長い手紙を書いて
いつか 樹々の葉が散り敷く頃
並木道を 不安げに さまよい歩くことでしょう

感想など

こういう叙情詩を解説してもほぼ意味がないものだ
なぜ この詩が人気があるかといえば
秋と孤独と 夕暮れの残光の中の神の恵み これらが美しく混ざり合ってるからだ
わたしも数えきれないほどもう長い年月
折りに触れて読み返したが
読むほどに味がでるう
詩とは元来そういうものだろう
 

欧米の詩の翻訳

詩は翻訳できないという。日本の俳句も絶対他の言語に置き換えは不可能だという。
それはそうだが、ある言語で書かれた詩の奥底に潜む人間の魂やイメージは、別の言語でも伝えることはできる。なぜならそもそも心と魂が先にあってそれを言葉で表現しているからで、心と魂は絵画や音楽のように言葉を介さないからだ。
とはいってももちろん原語のすばらしさは消えるのだが、それでもその内奥の輝きは翻訳でもかなり出てくるのだ、あとは読むものの感性の問題となる
 

戦後西ドイツの叙情詩人気度ベスト3

かつての西ドイツで近代ドイツの叙情詩の人気調査があった。第三位に輝いたのが、今回紹介するリルケの秋の日である。ちなみに2位はヘッセの霧の中 一位は、カロッサの古い泉である。それらはまた後日紹介するとしょう。
リルケは近代ドイツ最大の詩人だ。ドゥイノの悲歌などの壮大な詩を書いた。今回紹介の詩は初期のもので形象詩集の中に入っているが、哲学的宗教的な後期のものより形象詩集が一番人気があるようである。

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