【ブログ版】世界の名作文学を5分で語る|名作の紹介と批評と創作

YouTubeチャンネル『世界の名作文学を5分で語る』のブログ版です。世界と日本の名作紹介と様々な文学批評 そして自作の詩と小説の発表の場です

自作の詩|「ヘッセ幻想」テロ・戦争・感傷と成長・神々の反乱

「ヘッセ幻想」

 

 

古い校舎を再び訪ね

今は廃墟になっていようと

かつて学んだことと

かつてそこにあった心のすべてを

「場」というものから瞬時に思い出す

 

「デーミアン」「荒野の狼」 

「ナルティスとゴルトムント」「ガラス玉演戯」

これらの作品には成長したぼくが心を打たれた

 

 

 しかしこれらの深遠な文明批評の前の

「郷愁」や「春の嵐」や 

世界文学の花舞台からははずれていくであろう

甘く神経症的な小説群こそが

本当のヘッセなのだと思っている

そんな小説とともに

一級の叙情詩を書いて

どうにかこうにか生きていくのが

本来のヘッセだったのだと思っている

 

 

二つの大戦は彼を大化けさせて

人とは思えないような高みに

結果として連れて行った

ドイツ人にとっての二つの大戦は

トーマス・マンが「魔の山」の序文で

第一次大戦の前と後をあれほど力を込めて語り

ファウストゥス博士」でもくどいほど

二つの大戦を語るように

神々の黄昏以外の何者でもない

 

 

もしも今日

ぼくが生きている間に大戦に遭遇したら

「ガラス玉演戯」を書かずに

テロリストになるだろう

今や一人で数千人を殺せる

理論的には数十万人を そして 

数百万人にだって復讐できるのだ

無念の 耐え切れぬ 底なしの悲しみの

思いを昇華させて言葉に刻み

現在を象徴として記録し

未来へ向かって

一世代の知恵として手渡す時代は終わり

個人の思いをそのまま現在に

行動でぶつけられる時代

書き留めるとは

あきらめることだったのかもしれない

つまり人間性の最良の部分を放棄し

人間性の忌むべき隠すべき部分に

知性のエンジンを加えて

最悪の野蛮に戻ったのだ

奥底の闇から怪物を連れ出すことを

妨げるものは消え

それを手なずけるものも消えた

 

アキラメルナ

イノチノカギリフクシュウシロ

ウラミナラドコニデモコロガッテイル

 

制御へ向けての戦いは今始まったばかりだ

これは新たな大戦と呼べるのかもしれない

 

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