詩
文学創作 小説 詩 ポエム エセーのためのカフェ
同じ一つの物語 by 辻斗真
同じ時刻に同じ方向に
ひときわ照り輝く星がある
長い年月が経ち
再び猫の親子と巡り会う
母猫は前足と後ろ足で
目の開く前の我が子数匹を囲んで
乳を飲ませる
母猫はそれを覗く人間の子どもに向かって
鋭く鳴き声を浴びせる
あの時は祖父の家の納戸の奥
今は妻の実家の倉庫の中
あの時の子どもは自分と姉で
今は娘と息子
あの時は白地に黒と灰色の斑点のついた猫で
今は真っ白な猫
背景がどれほど変わったとしても
この体験を誰かに語ろうとする時
それは同じ一つの物語となる
だからあのひときわ照り輝く別の星から眺めれば
その広大な距離と時間を越えるうちに
地球の光が運んでいる無数の出来事は
同じ唯一の物語となって
青く輝くばかりなのだ