【ブログ版】世界の名作文学を5分で語る|名作の紹介と批評と創作

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『宇宙船から地球を見つめるようには 地平線に目をやれない』

『宇宙船から地球を見つめるようには 地平線に目をやれない』



宇宙船から地球を見つめるようには
地平線に目をやれない
はじめて人が馬を乗りこなした時
すでに未来に向かって戦死する馬の数は決まってしまったのだ
始原の交通革命によって人は地平線のかなたにまで平気で移動するようになった(*馬によって日に300KMの移動が可能に。それまでは30KWだった)
土埃を立てながら見たこともない動物に乗って信じられないスピードで統率の取れた集団がオアシスの周りをねぐらにして以来
馬に乗らない人々は地平線を禍々しいものとして恐れるようになったが
馬に乗る者たちは未来と希望を告げるものとして地平線を夢見るようになった
この時から 宇宙船から地球を見つめるようには
地平線に目をやれなくなったのだ
虐げられた平和主義者の狼たちが群れを追われてやってきた最初の日はいつだったか?
平和な肉を取り 仲間内でそれを分け合うことなく
早い者勝ちで貪り食うことへの反発から
宥和を愛する狼の逸脱者たちは人の群れへとやってきた
そして夜 自分たちが捨てた狼の群れが来ることを・・・
その闇の中の危険を・・・
人に伝える代わりに争いなく餌をもらうようになった
その始原の取引以来
それらの狼たちは犬と呼ばれるようになった
宇宙船から地球を見つめるようには
地平線に目をやれない
地平線から 馬に乗った人の集団が土埃を上げて襲来し
闇の広がりに潜む敵意に対して目を配る夜が重なっていき
あまりにも多くの物語があとからあとから続いていった
ゆえに
宇宙船から地球を見つめるようには
地平線に目をやれない