【ブログ版】世界の名作文学を5分で語る|名作の紹介と批評と創作

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堤防|詩

 堤防

その堤防は海への道であった
そしてまた風の通る道であった
それは外海と
港の守る内海の領域との間に
見事なほどの一線を引いていた
しかしそれは物理的には違いはなく
魂に立ち込める雲の作る境界であった
堤防の上の空間に光が
時によるとオーロラのように
たゆたいながら現れては消える像を見た
だが在り方としてはそれは海への道であり
それはすなわち物理的な海への道であった
子供たちはその当時
夕暮れ時に堤防の突端に行き
何をするでもなく海風に吹かれながら
語り合ったものだ
次の葬式の予定について
その頃はすべての死者は村民総出で見送った
その年の死者の名を誰もが言えた時代だった