【ブログ版】世界の名作文学を5分で語る|名作の紹介と批評と創作

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作家の目で読むドン・キホーテ NA


作家の目でドン・キホーテを読んでみる

物を書いてる作家としてドン・キホーテを読むと多くのことを発見する。

あれは読み始めると1ページごとに爆笑するほど面白いのだが

一番重要なことはそこにあるのではない。

作家として読むのであれば

なぜドン・キホーテが近代小説の父になっているか

を意識して読まなければならない。


あれは、当時の、まさにアロンソ・キハーノが没頭した

騎士物語のパロディなのだということ。

本当は真面目に騎士が姫君に叙勲を受けて騎士となり、

冒険して悪と戦う、そういう世界なのにそれがねじれているのである。

完ぺきにパロディにして笑い話にしているのだ。

それはカフカにさえ通じるのである。

カフカは現実を暗く深くパロディ化して書いたのである。

セルバンテスは果てしなく明るく深くパロディ化したのである

パロディ化するということは、前提として徹底的に対象化するということだ。

セルバンテスには誰よりも騎士物語のポイントがわかっており、

一番面白いつぼの部分を滑稽に焼き直しているからこそ爆笑するのである。

こんな風に物事を対象化して、

再構成して世界を作り直す作業はセルバンテスが始めたといっても過言ではないのである。



滑稽な真面目さは悲惨を生むがそれこそ人間の姿

そして、しかしドン・キホーテ個人の中ではそれは滑稽でもなく

本人にとっては真面目な話なのである。

しかしそれを俯瞰するセルバンテス

これはシーデ・ハメーテ・ベネンヘリというイスラム人が書いたと、

さらなるパロディを作っている。

そしてはたからみたら滑稽な狂人であるドン・キホーテは、本人は

真面目にその騎士的世界で生きて活動しているのだということも抑えておくべきだ。

ドン・キホーテの、いちいちの出来事への対応は真摯であり、

吐くセリフは名言だらけ。深く濃く柔らかい。

狂人だと知ってなければ賢者に見えるだろう。

にもかかわらず、それは滑稽で悲惨である。

にもかかわらず爆笑するのである。

ゆえにドン・キホーテには自我のかけらもなく、

あらゆる近代文学のビッグバンとしての位置づけになるのである。