【ブログ版】世界の名作文学を5分で語る|名作の紹介と批評と創作

YouTubeチャンネル『世界の名作文学を5分で語る』のブログ版です。世界と日本の名作紹介と様々な文学批評 そして自作の詩と小説の発表の場です

万葉集の中の随筆を知ってますか? |山上憶良の随筆は日本最古の随筆ではないか?

万葉集は歌集ですが、中には随筆もありますね。
山上憶良が病に伏したわが身を顧みて書いたもの。
現代文にて
沈痾自哀(ちんあじあい)の文①
「  ひとり考えてみると、朝夕に山野で狩猟をして生活の糧を得る者ですら、殺生の罪をうけることなく生活することが出来、昼夜に河や海に魚を釣る者すら、なお幸せに世を暮らしている。
まして、私は生れてから今日にいたるまで、進んで善を修める志を持ち、未だ一度も罪を犯すような心を持っていない。そこで、仏の三宝である仏・法・僧を尊び、一日も欠かさず勤行を行ひ、多くの神を尊重して、一夜として礼拝を欠いたことはない。
なんと、恥ずかしいことでしょう。私が何の罪を犯して、このような重い疾病になったのでしょうか
初めて重病にかかってから、もう年月も久しい。今年七十四歳で、頭髪はすでに白きをまじえ、体力は衰えている。この老齢に加えて、この病がある。諺に「痛い傷の上にさらに塩をつける。短い木の端をまた切る」というが、このことである。
手足は動かず関節はすべて痛み、身体は大変重くて鈞石の重さを背負っているようである。
布を頼って起き立とうとすると翼の折れた鳥のように倒れ、杖にすがって歩こうとすると足なえの驢馬のようである。私は、身は十分に世俗に染み、心もまた俗塵に汚れているので、過ちの原因、祟りの潜んでいる所を知ろうと思って、亀卜の占い師や神意を聞くものの門を叩いてまわった。
彼らのいうところは、時として本当であり、時として虚妄だったけれども、その教えのままに神に幣帛をささげ、祈りをささげつくした。しかし、いよいよ苦しみを増すことはあっても、一向に癒えることはなかった 」

万葉集第五巻の896首と897種の間に
山上憶良の随筆!が文庫本にして13ページ分(漢文と読み下し分が交互にあるから実質は7ページ分)もあります。
歌以外にもこういう珠玉の随筆があるところがすごい。もっと脚光を浴びてもいいのではないだろうか。
なにせ日本最初の随筆だろうから。