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自作の小説 聖徳太子の遺書 第二話

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聖徳太子の遺書

発見1



 春休みになると、野球部の練習は新年度に向けて少しだれ気味となっていた。

レギュラー争いもほぼ終わっていた。ごくたまにスーパー1年生が入部と同時にレギュラーを取るがそんなことは滅多にない。そしてこれまで2年間一緒にやってきた3年生にしても1年間一緒にやってきた2年生にしても実力は熟知していたから皆自分の立ち位置はわかっていた。この時期に必死にやるのはレギュラー当落線場の奴だけだった。

そんな練習風景を見たくもないぼくは3学期が終わる前に休部願を出していた。

肩を壊したピッチャーの練習は、ひたすら下半身強化のための走り込みと筋力強化が定番だが、プロでもあるまいしこのまま治らないかもしれないし、バッターとしては才能ないみたいしだし、要はやけになってぼくはしばらく野球から離れることにしたのだ。肩が回復したらその時はそこからまた練習すればいいやと、当たり前のように考えたのだ。

そんなぼくに野球部の監督はなにも言わなかった。

ところがそんな僕に担任のハルミ先生は3学期の修了式の時にこう言った。

「逃げてるよね。男らしくないんじゃない。走り込みして努力してたら投手として、野球選手として回復しなくても人間として成長するのよ」

 はっきり言ってこういうことは一番言われたくなかった。そこでぼくはひねくれた顔して先生の前から素早く立ち去った。

 ハルミ先生は熱い教師だった。生徒にとっては暑苦しい先生だった。ぼくはなんだかうざい人だと思っていた。何かにつけて熱いセリフを畳み掛けてくる。それに感動して涙する奴もいるから世の中わからないものだ。

 ところがその夜のことだった。ハルミ先生から電話があったのだ。

「わたしの恩師に大学で歴史を教えてる先生がいてね。ちょと力の強い若者を連れてきてほしいと言われたの。ちょうど高田くん、力強くて暇にしてるはずだからお願いしたいと思ってね」

 聞けば重い石を運ぶ作業があるらしい、考古学の発掘などでは若者がアルバイトでよく重いものを掘ったり運んだりするのだそうだ。

多少のバイト代も出るというし、よくわからないがハルミ先生の言うように暇だったから行くことにした。



 *この小説のネタ本である哲学者やすいゆたか氏の著書。氏はこの中で聖徳太子が本来の皇祖神である天御中主を天照大神に差し替えたと唱える。三貴神のうち月読こそが正当であり海神族倭人は航海のために北極星と月こそ寿ぎ、太陽が重要になったのは相当あとになってからであるとしている




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