詩
by 古荘英雄
文学創作 小説 詩 ポエム エセーのためのカフェ
小説用の創作ノートの文章で、単独で読めるものを散文詩のつもりでアップしてみました。
カミユの太陽の賛歌や反抗の論理の中の文章は素敵だが。これは詩だろうか?
この文章をもとに5つの短編小説を書きました。
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それはあの晩秋の朝の光の中、小学校のグランドから車道を転がり、そのまま海に落ちたドッジボールのことだ。
強いボールを投げたわたしの責任を仲間は追求し、わたしはそれを拾いに行くはめになった。学校を出て車道を越えて砂浜に降りる。そして波打ち際に浮いているボールに手を伸ばすが、届かずにそれはだんだんと離れていく。わたしは膝まで水につかって、ボールとともにさらに歩を進めようとした。その時、先生の大声が響いたのだった。
わたしを囃し立てていた騒ぎは収まり、静けさが突然現れた。
海は青く微かに水蒸気が見えた。遠くの島々と水平線が鮮やかに浮かび上がっていた。その広がりは、まだ想像さえできないわたしたちの未来と自由を指し示していた。
あれは生きたボールとの別れだった。2、3日もすればあらゆるごみの流れ着く船着き場で再会できることは知っていたが、そこではもう「もの」は死んでいるのだ。あの時子供たちと別れていくボールは、「もの」としての寿命を終えようとしていた。午前の光が海面にきらびやかに反射していた。
その輝きの中でわたしたちの心が染み込み私たちを映していた「もの」としてのボールは、わたしたちのはるか遠くへ、未来へ 、おそらくはあの時子供だったわたしたちの死にさえ向かって、ゆっくりと旅を始めたのだった。