渡辺淳一の小説を読んでいる。渡辺淳一といえば、失楽園か愛の流刑地が有名だが、あれらは性的描写が過激であるということ以外、それほど面白い話でもない。
私が今読んでいるのは 流氷への旅 である。
これは大学時代にキャンプをするサークルにいた私が毎年夏にサークル仲間と北海道をアタックザックをしょってお旅をしたとき、みんなで冬の流氷はすばらしいのだろうなと毎回話して、実際流氷を見に行った奴らもいたが、私は行かずに流氷の本を買ったということだった。
以来、40年が過ぎたがいまだに読んだことがなかった、つまり40年も積読すのすえ、ついに文字と言葉は溶解したのである。
私は日本の現代文学の場合、面白いかどうかは最初の50ページで完全に決まる。あとは水戸黄門ではないが、思った通り面白かったなで終わる。だから実は一番感動するのは、50ページほどを読み終えたところだ。
で
面白いのである。今や230ページほどをよみ、あと300ページくらい残っているがもう面白いというのがわかったから読まなくてもいいくらいだが、面白くて続きも読んでいる。
的確な打てば響くような風景描写、期待通りの人間模様の展開。そしてワンセンテンスは短く文体は軽妙。素晴らしい芸だと思う。
動画:世界の名作文学を5分で語る
終わる寸前まで面白かったのだが、なんともあっけない、驚くほどの、ありえないほどの、終わり方をしてしまっていた。
もっともっと盛り上げて感動の渦に投げ込む終わり方ができたはずなのに、ずっと引っ張ってきた謎の部分とそれにもとづく登場人物の行動と人間相関図が、すべて紐解かれて世界は新たな時代を迎える、そう思っていたのだが、いやあ、なんだこれは?うそだろう?
この期待外れ度は、すごい。世紀の腰砕けだ。
ということで楽しんで読んで楽しく読み終わりましたが、納得できない形で終了となりました。